ホンダ オデッセイ CR-V ヴェゼルなどに採用される振幅感応型ダンパーについて
NSXの開発責任者であり、操安屋さんであった上原さんが引退後、2010年頃を皮切りに、ホンダ車のサスペンションの乗り心地が大きく変わったのは、ご存知の方もいらっしゃると思います。
以前のホンダ車は、サスペンションが固く、路面から大きな入力を拾っていなくても、初期からショックの減衰力がしっかりと効いていて、非常にゴツゴツ感のある乗り心地でした。
私を含めて、昔からホンダ車に乗ってきた方にとっては、初期からショックの減衰力がしっかりと効いている事によって、非常にダイレクトなハンドリング、クルマの接地性の高さ、俊敏な挙動を示してくれるなど、他社と比べてレーシーな乗り心地がまた良かったりもしました。
最近では、操安の責任者が変わってから、ホンダのクルマの乗り心地が大きく変わり、私の知る限りでは、現在のオデッセイがザックスの振幅感応型ダンパーを採用して以来、シャトルやCR-V、ベゼルなどに横展されたように思います。
それでは、この振幅感応型ダンパーによって、なぜ、これだけホンダ車の乗り心地が激変したのかについて紹介をしたいと思います。
振幅感応型ダンパーになって乗り心地が良くなったのは、サスペンションが路面の凹凸からの入力により拾う振幅により、低速から高速までショックがストロークし、その振幅の度合いによって可変で減衰力が調整出来るようになったからです。
今まで低速域のストロークでは、急激に減衰力が立ち上がる1次低速減衰領域、そこから高速域で減衰力がリニアに立ち上がる2次高速減衰領域があり、初期から減衰力が立ち上がるので、路面からの突き上げが大きく、非常にゴツゴツした乗り味でした。
また、高速域のストロークでは、低速域よりも減衰力の立ち上がりが鈍くなり、バネ下のバタつきが収束しにくく、減衰力の位相遅れが増える事で、減衰力のヒステリシスが大きくなり、クルマの安定性が乏しい印象がありました。
それが振幅感応型ダンパーになってから、低速域の手前の極低速域から減衰特性を出せるようになり、振幅か少ない所では減衰の立ち上がりを鈍くさせて、二次曲線的な減衰力の立ち上がり方に特性が変わっています。
そして、極低速域から低速域に到達する時は、減衰力を立ち上げて足の踏ん張りを持たせて、悪路などのストロークの多い高速域では、減衰力の立ち上げ方に飽和特性を持たせて乗り心地を確保し、スプリングとバンプラバーで衝撃を吸収させるセッティングになっています。
さらに、リバンプ側では、ショックに内蔵されたリバンプスプリングにより、高速域での乗り心地を確保しつつ、ロール剛性を上げています。
それによって、一般道や高速道路などのフラットな路面では、フラットライド且つしっとりとした質感の高い走りが実現し、高速道路出入口などでコーナーリングする走行などでは、しっかりと足が踏ん張ってくれるため、安定感をもたせた走りに変わっています。
従って、振幅感応型ダンパーによって、普段乗り心地が良くて、ダイナミックレンジでもしっかりと踏ん張ってくれる足が実現出来るので、より一層ホンダらしい走りに磨きがかかると言っても過言では無いのではないでしょうか?
より一層深まる、ホンダ車の走りが見逃せません。
大林 寿行 View All
H社及びM社ドイツエンジン部品メーカー2社を経て、国内自動車メーカーの実験エンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、H研究所出向中、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」やM社時代大学の研究室との共同研究「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆な日々は続かず、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。情報発信を駆使して、エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「エンスージアストへの道」ブログを立ち上げ、クルマ系記事を執筆。今年からは、クルマ系動画クリエイターとして独立を果たし、新車及びカー用品のレビューを本格的に実施。ブログ記事執筆によって、動画の新車レビューでお届け出来なかった内容を執筆し、クルマのエッセンスをより詳しく発信。また、カー用品では、デシダルルームミラーを始めとした、主に新車購入時に注目される用品を中心に、海外メーカーからタイアップの話を頂きつつ更新中。クルマを通じて、誰もが楽しいカーライフが得られるきっかけづくりを目指します。