Ferrari F355 F1 berlinetta【6MTと変わらない操作性を持つF1マチック】

学生の頃から憧れていた355に乗り換えて半月余りが立ちました。
20年以上も前のクルマですし、ずっと昔から知っている代わり映えの無いクルマなので、買ったらすぐに飽きてしまうんじゃないかと思うことも有りました。
しかし、飽きるという言葉とは無縁で、いつも暇があったら乗りに出かけたいと思うほど、単純に市街地だけを走っていても楽しいクルマで、買い換えて本当に良かったと満足しています。
特にスポーツカーは、トランスミッションによって、楽しさが大きく変わります。
自分のペースでクルマを操ることが出来るかが、スポーツカーを楽しむ一つの生命線だと私は考えています。
そんな中、マニュアル志向の私が、果たしてF1マチックのクルマに乗り換えたら、不満が出るんじゃないか? やはり、直ぐに355の6MT車に気持ちが移ってしまうのではないか?
納車前にF1マチックの事を何も知らない私が、その事ばかりを繰り返し考えていて、非常にストレスを感じていたほどでした。
だけど、今回は、名古屋の販売店の方との繋がりを持てた事によって、このクルマを購入した経緯もあるし、また近い内に乗り換えれば良いと言い聞かせる自分との格闘でした。
納車前にそんな経緯が有り、納車後には、徹底的にF1マチックの作動について、まずは公道で様子をみることにしました。
結論は、6MTとまったく変わらない操作性を持つF1マチックでした。
それは、変速時にシフトアップ及びシフトダウンする際、6MTと変速速度が変わらないからです。
厳密に言えば、コーンズの取説を読むと、シフトアップ時は、アクセルを踏み込んだ状態で、シフトアップをした方が良いと記載されているので、6MTよりもトラクションの抜けが少なく、シフトアップが速いメリットがあるかも知れません。
また、シフトダウン時は、現代のクルマのようにDBWが搭載されているクルマではなく、ダイレクトなスロットル操作が出来るワイヤースロットルのため、自動的にブリッピングはしてくれません。
しかし、そこは、オートブリッピング付きの6MT車でなければ、基本的に同じ作動なので、人間がエンジンの回転合わせをする必要があります。
その時、F1マチックは、緩い減速時または減速を伴わない時にシフトダウンをする際には、パドルでシフトダウンをした瞬間、アクセルペダルを少し踏み込んで、回転を上げて変速させて、シフトショックを抑えます。
一方で、速度勾配が高く、ハードなブレーキングを要するセクションでは、エンジン回転が高いままで減速をするので、そのままパドルでシフトダウンをすると、シフトロックしてしまい、駆動系にダメージを受けてしまいます。
マニュアルと変わらない操作性を持っていると一番感じた理由は、比較的急な減速を要するブレーキング、次の加速に備えて、減速と共にシフトダウンをして進入するセクションでは、ブレーキングをしながらパドルでシフトダウンをした瞬間に、アクセルを煽る操作、所謂ヒールアンドトーがF1マチックでも、6MT時のそれと、まったく違いが感じられないからでした。
これによって、公道で走るだけなら、6MTとの操作性には、まったく違いが感じられず、むしろ、355は、フェラーリの伝統的なゲート式シフト且つ長いシフトレバーだとやりにくいので、それでシフトするよりも操作しやすいし、シフトミスが無いので、F1マチックの方が操作性が良いのではないかと思うほどでした。
予想もしていなかったF1マチックの操作性、さすが、レースを知り尽くしたフェラーリが開発した初のAMTは、6MTからの乗り換えであれば、まったく違和感を感じる事なく、スポーツドライビングが出来るもう一つの6MTではないかと思うほど完成度が高い機構です。
今後は、クルマの過渡特性を把握するために、モテギ南に持ち込んで、F1マチックとスポーツ走行のマッチングについて検証していく予定です。






大林 寿行 View All
H社及びM社ドイツエンジン部品メーカー2社を経て、国内自動車メーカーの実験エンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、H研究所出向中、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」やM社時代大学の研究室との共同研究「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆な日々は続かず、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。情報発信を駆使して、エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「エンスージアストへの道」ブログを立ち上げ、クルマ系記事を執筆。今年からは、クルマ系動画クリエイターとして独立を果たし、新車及びカー用品のレビューを本格的に実施。ブログ記事執筆によって、動画の新車レビューでお届け出来なかった内容を執筆し、クルマのエッセンスをより詳しく発信。また、カー用品では、デシダルルームミラーを始めとした、主に新車購入時に注目される用品を中心に、海外メーカーからタイアップの話を頂きつつ更新中。クルマを通じて、誰もが楽しいカーライフが得られるきっかけづくりを目指します。