Ferrari F355 355F1 GTB【フロントリフトの改善策について】

355オーナーさんは、ご存知の方も多いと思いますが、120km/h以上の車速で走行をすると、フロントがリフトする性質があります。
この車速に到達すると、ステアリングの操舵感が極端に軽くなり、操舵感が乏しくなり、タイヤのグリップ感が掴めず、走行時の安心感が極端に低下します。
欧州車にも関わらず、なぜ、速度レンジが低い領域で、走行時の安心感が乏しくなるのでしょうか?
その一つにフロントノーズがリフトするためだと考えられます。
355は、下面がフラットボトムのため、走行時の空力を非常に意識したボディー形状になっているはずです。
しかし、今のクルマのように、フロントノーズ下面のリップスポイラーやストレーキが付いていません。
これにより、フロントノーズが長いため、下面の走行風の流速が上がり、ホイールハウスに風が流れ込み、乱流が起きる事によって、フロントが浮いてしまうのではないかと考えています。
それを防ぐために、フロント下面に入る走行風の流速を落とすため、リップスポイラーを付けて、且つ左右のホイールハウスの前にストレーキを付けて、タイヤに風を当てにくくして、ホイールハウスに風が入り込まないようにしました。
この状態で走らせて見た所、やはり、120km/h前後で、ステアリングの操舵感が乏しくなり、タイヤのグリップ感が掴みにくくなります。
ただ、気持ちフロントのリフトが緩和されたためか、操舵感は乏しい物の、少しフロントグリップが向上して、安心感が出た印象が有りました。
この走行の後、さらに改善出来る策を調べました。
フロントのリフトを抑えるために、フィン付きのアンダーカバーがありますが、これは、NSX 02Rでも用いられた手法です。
このクルマは空力をかなり意識したクルマだったので、その手法を取り入れてみました。
355の場合は、既にフロント下面はフラットになっているので、L字のゴム材を用意して、フィンとして取り付けをしました。
これによって、前から流れる走行風の直進性が上がり、ホイールハウスに走行風が入り込まず、且つ流速が上げられるため、フロントのリフトが抑えられるのではないかと考えました。
再び走行してみた結果、確実に効果が有ることが分かりました。
今まで、120km/h前後からステアリングの操舵感が無くなる現象が出ていたのが、140km/hまで速度レンジが上がるようになりました。
またコーナーリング時は、リフトしにくくなったせいか、より一層フロントのノーズが入りやすくなり、コーナーリング時のタイヤのグリップ感が得られるようになりました。
これは、プラシボ効果ではなく、安心感を感じ取れる速度レンジが上がった事をはっきりと感じました。
さらにダウンフォースを求めるレーシングカーは、フロントリップやストレーキが無いので、それらを外した時、どう高速安定性が変化をするのか、さらに検証を進める予定でおります。






大林 寿行 View All
H社及びM社ドイツエンジン部品メーカー2社を経て、国内自動車メーカーの実験エンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、H研究所出向中、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」やM社時代大学の研究室との共同研究「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆な日々は続かず、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。情報発信を駆使して、エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「エンスージアストへの道」ブログを立ち上げ、クルマ系記事を執筆。今年からは、クルマ系動画クリエイターとして独立を果たし、新車及びカー用品のレビューを本格的に実施。ブログ記事執筆によって、動画の新車レビューでお届け出来なかった内容を執筆し、クルマのエッセンスをより詳しく発信。また、カー用品では、デシダルルームミラーを始めとした、主に新車購入時に注目される用品を中心に、海外メーカーからタイアップの話を頂きつつ更新中。クルマを通じて、誰もが楽しいカーライフが得られるきっかけづくりを目指します。