Ferrari F355の故障原因と想定されるリスクについて

故障原因の特定が出来たので、その内容とリスクについてお伝えを致します。
ラジエーター周りとエンジン補機ベルト周りを確認したところ、ラジエーター自体にはトラブルはなく、正常にファンが回る事を確認しました。
しかし、予想はしていましたが、補機ベルトのテンショナープーリーのベアリングが粉砕していて、プーリー自体がベルト軸上から、バルクヘッド側に飛び出している事が確認出来ました。
この補機ベルトは、ACG、ウォーターポンプ、パワステポンプをクランクプーリーの回転力を使って回しているので、回らなくなってしまうと、発電が不能となり、エンジン内部の水が循環せず、パワステが利かなくなります。
しかし、トラブルが出た当初、それらの不具合には見舞われず、それなりに機能を果たして走っていました。
それは、テンショナープーリー自体は脱落してしまった物の、プーリー自体の軸に補機ベルトが接触していて、その軸と摺動しながら、補機が回されていたからだと考えられます。
このまま運転を続けていたら、補機ベルトが切れて、ステアリングが重くなると同時に、エンジンの冷却水が回らなくなるので、エンジン内部に介在する冷却水がスポット的に高温となり、ヘッドとブロックの合わせ面などから水が吹くオーバーヒートを起こしていたと考えられます。
ベルトが切れた途端にエンジンが停止してくれるのが一番良いのですが、恐らく、ACGが駆動していなくても、バッテリー電源自体でエンジンは運転を続ける事が出可能だったりするクルマもあるので、最悪、スポット的なオーバーヒートが考えられます。
従いまして、異音または異臭が発生した場合は、故障被害の拡大を避ける意味でも、無理をせずクルマを安全な場所に停止させて、多少時間がかかっても、レッカーで運搬をすることを強くお伝えを致します。
大林 寿行 View All
H社及びM社ドイツエンジン部品メーカー2社を経て、国内自動車メーカーの実験エンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、H研究所出向中、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」やM社時代大学の研究室との共同研究「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆な日々は続かず、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。情報発信を駆使して、エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「エンスージアストへの道」ブログを立ち上げ、クルマ系記事を執筆。今年からは、クルマ系動画クリエイターとして独立を果たし、新車及びカー用品のレビューを本格的に実施。ブログ記事執筆によって、動画の新車レビューでお届け出来なかった内容を執筆し、クルマのエッセンスをより詳しく発信。また、カー用品では、デシダルルームミラーを始めとした、主に新車購入時に注目される用品を中心に、海外メーカーからタイアップの話を頂きつつ更新中。クルマを通じて、誰もが楽しいカーライフが得られるきっかけづくりを目指します。
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