今だからこそ、ネオクラシックフェラーリに乗る──Vol.5【なぜ、最新のクルマではなく、ネオ・クラシックに拘るのか?②】

〓拘る理由は、「壊れた場所を今の技術で対策出来る見込みがあるから。」
F355は、初期モデルのPAが94年に登場してから26年が経過しています。
今から購入される方も、現在、所有されている方も、これまでのクルマの走らせ方やメンテナンス履歴によって、トラブルが発生する時期は変わって来るでしょうが、行う修理は、どの355オーナーさんでも変わらないはずです。

〓ベアリンググリス切れによるトラブル
F355は、補機及びベルト系のベアリングのトラブルが必ず出ます。
タイミングベルト交換が2万キロ毎の交換だったり、1度または2度の交換で、6万キロ超乗られている方の話を聞いたりと、交換サイクルは様々ですが、何がダメになって交換しなければならないのかは、一般的にあまり知られていない気がしています。
私のクルマの事例は、タイミングベルトは、前のオーナーさんが2万キロで交換して、現在、1.5万キロを走行で、不具合は有りませんが、新車から無交換3.4万キロでオルタネータープーリーのベアリングのアウターレースが脱落しました。
この原因は、ベアリングに充填されているグリス切れによる要因だと考えています。
事例の詳細は、こちらの記事で紹介しています。
タイミングベルトにもオルタネータープーリー同様、テンショナープーリー(SKF製ベアリング内蔵型)が2個、片バンクずつ使われています。
同じSKF製の物が使われていますが、レースの幅が広いために、複列ベアリング構造だと思われるので、オルタネータープーリベアリングよりも寿命は長いのではないかと思われます。

しかし、ベアリングのメタルシールの継ぎ目からグリスが漏れ出していたり、ベアリング自体が滑らかに回転しない、または異音及び振動が出る場合には、ボールベアリング、インナー及びアウターレース、リテーナに油膜切れが起きており、間もなくリテーナ折損によりベアリング脱落のリスクが伴うと考えられます。
〓ティキソグリス充填による対策
オルタネータープーリベアリングを工場出荷状態で組み付けをしても、また同じトラブルを引き起こす事は目に見えています。
そこで、ネオクラシック系のクルマに現代の資材を導入して、従来のウィークポイントを改善することが出来る見込みがあるので、新品のベアリンググリスを取り除き、ティキソグリスを充填をして対策を図りました。
チキソグリスは、No氏のSL55AMGのスーパーチャージャーのコンプレッサーベアリングの焼付き対策に効果滴面で、高負荷を多用した5万km走行をしても不具合が出ないようになるとのことで、使ってみる事にしました。
工場出荷状態のグリス量 ティキソグリス充填後
使用用途は以下の通りです。
①高温で通常のグリースが使えないようなところ
②厳寒地などで通常のグリースが使えないところ
③水や湿気を受けやすい箇所
④グリース再充填期間を延ばしたい部位
⑤ 高荷重のかかる潤滑部位
⑥より優れた潤滑性能が要求される箇所
⑦寿命を延ばしたい機器類の潤滑部位
※スーパーティキソグリースHPより抜粋
〓煮詰めによる期待から得られる楽しみ
今回、オルタネータープーリベアリングの脱落によって、なぜ、3.4万キロでトラブルが出たのかを分析しました。
ベアリンググリスの充填量が少なく、エンジンを高回転域で使用する頻度が多くなると、遠心力によってグリスがオイルシールの継ぎ目から徐々にグリスがリークして行きます。
更に、リアエンジンでありつつ、ラジエーター、オイルタンク、タコ足、マフラーなど、エンジンからの熱源が全てエンジンルーム内にあるため、各部のパーツの熱負荷を受けやすく、ベアリング自体の寿命が短くなっているのではないかとも考えられます。
今回、ティキソグリースの再充填により、①、④、⑥、⑦の用途の合致により、ベアリングの寿命が伸びてくれるかどうか結果を楽しみに待ちながら乗って行きたいと思っています。
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大林 寿行 View All
H社及びM社ドイツエンジン部品メーカー2社を経て、国内自動車メーカーの実験エンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、H研究所出向中、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」やM社時代大学の研究室との共同研究「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆な日々は続かず、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。情報発信を駆使して、エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「エンスージアストへの道」ブログを立ち上げ、クルマ系記事を執筆。今年からは、クルマ系動画クリエイターとして独立を果たし、新車及びカー用品のレビューを本格的に実施。ブログ記事執筆によって、動画の新車レビューでお届け出来なかった内容を執筆し、クルマのエッセンスをより詳しく発信。また、カー用品では、デシダルルームミラーを始めとした、主に新車購入時に注目される用品を中心に、海外メーカーからタイアップの話を頂きつつ更新中。クルマを通じて、誰もが楽しいカーライフが得られるきっかけづくりを目指します。
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