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なぜ、エンジン負荷の大小に関わらず、オイル交換をした方が良いのか?

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オイルのせん断力が低下するため。

せん断力が低下してしまうと、エンジン内部の部品自体に油膜が形成されなくなってしまいます。

例えば、ピストンとライナーの隙間に介在するオイルの油膜が切れる事によって金属接触起こり、摺動面の摩擦熱上昇に伴い、スカートがライナーに凝着して、エンジン自体が機能破綻を起こしてしまいます。

せん断力が低下する主な要因は3つ。

・1つ目は、熱的劣化を受け、ある一定の温度上昇を伴ってしまう時です。現在、市販されているオイルは、マルチグレードの物がほとんどですが、高温側のグレードが高い程、熱に対する粘度が高く設定されています。

しかし、それには条件があって、油温が100度程度までであれば、粘度が低下する事はないのですが、130~140度になってしまうと、ベースオイルとの炭化水素の結合が、熱や酸化成分や機械的なせん断により切れ出してしまい、粘度が低下してしまいます。

油温が120度になると1番手、130度になると2番手、粘度グレードが下がると言われています。

・2つ目は、水分希釈の劣化で、オイルが80度を下回って走る事が多い時です。エンジン自体が軽負荷で稼働している頻度が多かったり、燃焼のオン・オフが多かったりすると、油温が上がりにくく、湿気により水分が通常よりも多く含んでしまいます。

また、ピストンとライナーのクリアランス、リングとリング溝のクリアランス、10を切るようなA/F比、ポート噴射の場合は、インジェクターの取り付け角度や内壁の面粗度が鏡面に近かったりすると、ガソリンが筒内の燃焼圧力発生に伴い、ブローバイガスと共にクランクケース内にブローダウンして、オイルを希釈させる事があります。

・3つ目は、高温の排ガスやブローバイガスNOxによる劣化です。

NOxの主成分は、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)であり、これらが湿気等の水分に溶けると硫酸(H20+NO2⇒H2NO3)や硝酸(H20+SO2⇒H2S04)になってしまい、それらの酸性物がオイルを劣化させてしまいます。

最近のクルマは、理論空燃比14.7より高いリーンバーン燃焼が主流になっており、燃焼温度が上がり、NOxが高くなっているため、オイルにかかる負担は非常に大きくなっています。

せん断力維持のため、未然にエンジントラブルを防ぐためにやるべき2つの事。

・1つ目は、油温130度を超えるような、高負荷領域でクルマを走らせた場合は、必ず新油に交換する事。

・2つ目は、オイルに混じり込んだ余分な水分やガソリンを蒸発させるために、80~100度程度まで油温を上げるクルマの乗り方をして、中途半端にエンジンの始動停止を避ける事。

せん断力維持の次に優先する作用は、こまめなオイル交換によるエンジン内部の清浄作用。

オイルその物に清浄作用の働きは兼ね備えており、エンジン内部で発生した酸性物を中和したり、炭化物などをオイル中に分散させ、金属の表面に付かないようにする働きがあります。

こうして、金属の摩耗を誘発する微粒子をオイルによってクランクケースの外に運び出して、フィルターで除去する働きをしています。

しかし、オイルを長期的に使用すると、燃料が不完全燃焼する時に発生するすす(スート)が、ブローバイガスと共にクランクケースに侵入する事によって、オイルと混ざり合います。

スートは、エンジンオイルの粘度を上げる性質があり、スラッジとなってオイル穴が詰まる事で循環を妨げ、エンジン冷却効率を低下させたり、作動機能を悪化させます。

今だからこそ、ネオクラシックフェラーリに乗る──Vol.7のヨーロッパ車の例で紹介しましたが、化学合成オイルでも長期に渡り、熱負荷が少ない日本の道路を走らせると、エンジン内部のヘッド周り及びオイルパン等に粘土化したスラッジが堆積してしまいます。

下の写真は、純正オイルを21000km毎交換で、おおよそ10万キロ走行時のヘッド周りのスラッジの状況です。

VANOSソレノイド及びバルブトロニックの作動不良により、ディーラーにてヘッド洗浄後の写真になります。

従って、ノーマルエンジンの場合は、純正オイルまたはSP及びSN規格のメーカーが定めたグレードのオイルを5000~10000キロくらいで、エンジン負荷の大小に関わらず、短期的に交換する事で、エンジンを良好に保つ事が出来ると考えています。

大林 寿行 View All

自動車部品メーカー2社を経て、現在、国内自動車メーカーのエンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」や「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆ではなく、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「ジャーナリストへの道」のFacebook page、ブログを立ち上げ、執筆に向けて記事を更新中。成長社会から成熟社会的へ変わる中、社会的な悩みにフォーカスし、読書や実体験を通じて問題解決に至るテーマとコンテンツ、自ら仕事を開拓出来るような道筋を配信。心と身体の健全化を図り、誰もが本当の自分と幸せを手に入れられる時代のきっかけづくりを目指す。

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