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F1マチックが壊れやすいのは、単なる都市伝説である。

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No氏の時期愛機となるFerrari 355F1 ベルリネッタ ファオラノハンドリングパッケージ クラブイタリア仕様の水没車が納車。

納車後の詳しいクルマの紹介は、ブログでも書こうと思っていますが、水没車を選んで、クルマのレストアを進めながら、完動車にしていこうと購入を決めたクルマです。

このクルマの購入を決意したのは、No氏と私とで、単に動くクルマを購入するだけではつまらない、ナンバーを取って、クルマが帰って来て良かったねと結果論しか付いてこない。これでは、面白くないと双方で意見が合致したからに他ならない。

大元の目的は、No氏のPAが事故に遭って大破してしまい、そのクルマを直すハードルが非常に高いため、骨格にダメージが無い今回のクルマを購入し、それをレストアして走れるようにするためです。

普通の人なら、水没車のクルマに何百万円もかけて購入せず、輸入車専門店で修理をしてもらう方が、安心ですし、楽ですし、待っているだけで、走れるクルマが直って戻ってきます。しかし、No氏は、その選択を選ばず、あえて水没車を購入しました。

水没車を復活させるために、観るべき項目がいくつか有り、完動車に仕立てるためのレストア手法、F1マチックからマニュアルへのコンバージョン手法、そして、せっかくF1システムを取り外すので、F1マチックの素性の明確化について、これらの要素を踏まえて、レストアプロジェクトをやって行く事にしました。

クルマがNo氏の元に入り、完動車に向けて、観るべき項目について着手しながら、youtube動画を日々アップして発信するのが私の役割ですが、今回、F1マチックのリグテストを実施して、お伝え出来る情報が得られたので、ここでお伝えをしたいと思います。

『F1マチックが壊れやすいシステムであることは、単なる都市伝説である。』

今まで、明確な情報が得られず、曖昧且つ不明な情報でしたので、私は、ずっと、パーツレベルで現物を確認したいと考えてこの時を待っていましたが、No氏の協力により検証できる時が得られました。

水没車から取り外したF1システムの一部であるパワーユニット、それに付いているサーボバルブ、オイルポンプ、そして、シフターの役割を果たすアクチュエーター、これらを用いて、単体でF1システムを組んで、変速確認を行いました。

変速確認をした結果、全く問題なく、パワーユニットもアクチュエーターも作動し、変速をしてくれることが分かりました。しかも、メーター読み6万キロ、水没車から取り外したユニットで有りながらです!

今回の事例から言えることは、F1マチックの骨格で有るパワーユニットやアクチュエーターは、早々すぐに壊れる物ではないという事です。

なぜ、355のF1マチックは、壊れやすいと言われ続けてきたのか? また、クルマによっては、壊れないで走り続けることが出来るのか?

それは、オーナーの乗り方によって、オイルポンプの負荷の掛かり具合が異なるからだと考えています。

355のF1マチックは、ブラシが付いたDCモーターとなっており、現代のブラシレスモーターと比べるとライフが短くなっています。

例えば、クルマの停車状態時に1速に入れたままにしておくと、よくクラッチの摩耗が進むと言われていますが、クラッチ自体は、駆動が切れている状態を維持し、アクセルを踏んで、エンジン回転が上がらない限り、半クラになることは有りません。

その証拠に、ギヤを入れて停止していても、F1マチックはクリープがありません。

よって、クラッチの摩耗は生じないのですが、それ以上に、クラッチが切れている時間が長くなるので、パワーユニットのサーボバルブが開いた状態となり、クラッチのレリーズに油圧を送り続けることになります。

そうすると、クラッチの油圧ライン自体は蓄圧を続けますが、油圧を一定に保つためには、オイルポンプを回す必要が出てきます。

それによって、オイルポンプ自体の稼働率が上がってしまい、負荷の高い所で作動するので、ブラシの摩耗促進、配線に過電流が流れる事で発熱等が生じるリスクが高くなり、オイルポンプ自体が過負荷となり、それを制御するコントロールユニットに不具合が生じるのではないかと考えられます。

また、アキュームレーター内部に窒素ガスが重点されたダイヤフラムがありますが、それ自体が機能を果たさなくなると、オイルライン内の油圧が保持されにくくなります。

また、エンジン、エキマニ、マフラーなどから受ける熱による雰囲気温度上昇によって油圧が低下し易くなったり、益々、オイルポンプに負荷が増えて行きますが、元々、設計段階から、オイルポンプ自体の出力や耐久性が、想定される乗り方や状況に対しての検討が甘く、適合していなかったのではないかと考えられる訳です。

私の廻りでは、不具合を抱えておらず、4万キロ、5万キロと快調に走行を続けている仲間内のクルマを観ています。

それは、オイルポンプ自体にダメージを受けていないクルマで、配線やコントロールユニット自体にもダメージを受けていない可能性があるからではないかと考えられます。

もう一つ重要なのが、日々のちょっとしたオイル管理。

355のF1マチックのアクチュエーターは、シャフトがストロークするとミスト状のオイルが大気開放するようになっています。

要するに、変速するたびにオイルが少しつづ消費するので、オイルライン内のオイル量の管理をしておかないと、オイル不足となってしまった場合、アキュームレーターに油圧を蓄圧する際、昇圧しにくい状況となり、ポンプ自体の稼働時間が長くなる結果に繋がります。

そうすると、パドルを引いているのに、たまに変速してくれなかったり、メーターパネル内のシフト警告灯が点滅したり、不具合が発生してくるようになると考えられます。

また、前述した通り、355のエンジンルーム内は、非常に高温となるシビアなコンディションのため、オイル自体の熱劣化による粘土低下で油圧が低下しやすくなり、オイルポンプの稼働率が上がることも考えられますので、オイル交換及びエア抜きも管理の対象になって来ると考えられます。

壊さないポイントは、オイルポンプに出来るだけ負荷をかけない乗り方をすること。

よく壊れると叫ばれた背景には、新車当時、オーナーの多くは、クルマのメカに精通していない富裕層がほとんどだったことや、交通量の多い大都市で乗られるケースが多いクルマであったことが考えられる事から、ストップ&ゴーが頻繁に続く道路事情で乗られているケースが多かったのではないかと考えられます。

そうすると、クルマが停車した時、ギヤが入ったままで、クラッチは切れた状態、いわゆる、オイルポンプが稼働しやすい状態が続き、常に高いライン圧力の負荷がかかりながらポンプが稼働していた事から、ポンプ及びコントロールユニットに不具合の影響をもたらしたのではないかと考えられます。

従って、そうならないように、停車することが予め分かっているのなら、ニュートラルを多用して、少しでもオイルポンプの負荷を抑える乗り方に変えるだけで、355のF1マチックは、信頼性の高いシステムへと様変わりすると考えられます。

355F1であっても決して壊れやすい訳では無い事を今一度、世の中に浸透させて行けたらと思っています。

変速確認用 F1システム
変速確認

大林 寿行 View All

自動車部品メーカー2社を経て、現在、国内自動車メーカーのエンジニアに従事。主にクルマのエンジン耐久信頼性実験とその研究に携わる。研究においては、エンジン内部の要素研究に着手。自動車技術会、SAEへ研究論文を発表し、「ピストンピン打音発生時の潤滑挙動可視化」や「ディーゼル用スチールピストンの摩擦力と特性とスラップ振動の関係」などがある。また、「内燃機関のピストン構造」で特許を出願。しかし、順風満帆ではなく、うつ病を患うことになり、これからの仕事の仕方について真剣に向き合う。エンジニアからジャーナリストへの転身を見据え、「ジャーナリストへの道」のFacebook page、ブログを立ち上げ、執筆に向けて記事を更新中。成長社会から成熟社会的へ変わる中、社会的な悩みにフォーカスし、読書や実体験を通じて問題解決に至るテーマとコンテンツ、自ら仕事を開拓出来るような道筋を配信。心と身体の健全化を図り、誰もが本当の自分と幸せを手に入れられる時代のきっかけづくりを目指す。

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